大規模水田作経営の展開を支援する目的で高度情報システムに関する研究を実施し、経営管理の高度化に結びつく経営情報システムの理論的整理を行うと共に、その結果を反映させながらパソコンによる経営情報システムの開発を行った。そして、作製したソフトウェアについて現地実証試験を実施し、有効性を確認した。それらの経営管理用ソフトウェアは、研究用としてばかりでなく、生産現場で広く利用され顕著な成果をあげている。 大規模水田作経営における経営情報システムの役割と具体的構成内容について実態分析を実施し、その理論的な整理をシステム開発に反映させるように努めた。本研究で開発に取り組んだのは、大規模水田作経営における経営情報システムの主要部分を構成する農業簿記会計(「農業経営簿記」)、農業経営計画(「線形計画法システム」)、圃場管理(「一筆圃場管理システム」)の3つのソフトウェアである。いずれもWindows版として開発した。 農業簿記会計に使用する「農業経営簿記」では、一般的な簿記会計システムにおける情報処理機能に加えて、キャッシュフローやマトリックスによる会計手法を収り込んで、資金繰りに関する分析・計画機能を重点的に搭載した。農業経営計画の策定に用いる「線形計画法システム」では、標準線形計画法とその拡張モデルを適応し、最適作付計画を始めとする大規模水田作経営の意志決定行動を支援できるようにした。圃場管理に適用する[一筆圃場管理システム」では、地理情報システムの技法を採用して、大規模水田作経営の生産管理場面から生じる作付や農作業等の各種の圃場情報を高度処理し、計画的水田利用の推進に結びつけるよう機能開発を行った。これらのソフトウェアのうち農儀容経営簿記については、ユーザー数が1.000人を超える状況になっている。
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