本研究は「中国型社会主義」の中心的内容をなす農村人民公社の理論とその形成から崩壊に至る歴史過程を全面的に整理し、それを通じて中国農村の歴史段階的・類型的特質を明らかにし、併せて国家と農民の対抗関係、権力による包摂の特徴を明らかにしようとするものである。 本年度は(1)「成功による幻惑」=農業集団化運動。集団農業への急激な制度的改変と「生産関係」の反作用重視、(2)初期人民公社構想=「社会主義から共産主義への移行形態」、(3)「農業は大〓に学べ」=「生産関係」重視から「主観能動性」・「階級闘争」重視へ、三部分について主として『毛沢東与中国農業発展』、『大躍進狂乱』、『人民公社狂想曲』、『大〓紅旗的昇落与墜落』、『中華人民共和国歴史紀実 曲折発展』、『大躍進』等の中国の新たな研究に依りながら、分析を進めた。 明らかにすべき問題点は、(1)何故に人民公社形態が誕生したのか。何故にそれは農民に歓迎され、熱狂的運動として全国で展開されたか、(2)人民公社体制は何故に急速に破綻したか、(3)にもかかわらず人民公社体制が27年に渡って存続し得た理由は何か、(4)「農業は大〓に学べ」が全農民的運動と展開された理由は何か、等であるが、自給自足的な農村経済と封建的宗族関係の伝統と「国権的社会主義」関係との融合により社会経済関係が政治関係に包摂され、それがために、政治に翻弄される側面とにも拘わらず、農民的生産力発展の系譜によって「共同体的規制」の下から小経営的萌芽が現れざるを得ない事実関係が浮かび上がってきた。 現在この部分を纏めつつある。
|