本研究は、生態系と調和しつつ経済的に自立可能な農業経営をエコエコ農業、あるいは「低投入高産出」型農業と呼び、その確立のための諸条件を検討するものである。地域の自然環境、社会経済条件を踏まえたアプローチが必要であり、個別農家レベルに加えて地域レベルでのエコエコ農業確立の課題を技術的経済的に解明することを目的としている。 本年度は、茨城県笠間市および新潟県上越市における個別農家調査の継続実施に加えて、福島県熱塩加納村で2集落33戸の稲作農家の質問票調査を実施した。当地は農協主導の下で1973年から有機米栽培を導入し、現在では村内水田580haのうち200ha余りで有機無農薬・低農薬米が栽培されている。水系を考慮して有機栽培集落を選定したり、組織的に契約販売を行ったりしており、エコエコ農業確立へ向けた地域的対応の好事例である。現在データを分析中であるが、近年では収益性の低下のため慣行栽培へ戻る農家が出現してきた。 上越市では、水田における緑肥導入の技術的課題を検討するため、レンゲ栽培実験を開始した。同時に、生物的雑草管理の可能性を検討するため、ヘアリーベッチの栽培試験も実施中である。この牧草には緑肥としての利用だけでなく、他の雑草繁茂を抑制する効果が期待されている。 笠間市では、無農薬無化学肥料方式の野菜栽培技術の体系化を図るため、有機野菜農家の継続調査を行った。とくに、緑肥(ソルガム)に替わるものとして雑草そのものの利用を検討するため、両者のバイオマスを計測中である。 インドネシア・バリ島高地の野菜栽培地帯において低投入型野菜栽培の技術的課題を解明するため、科研費国際学術研究で調査研究を継続実施した。当地では、昨年度中に195戸の個別農家の質問票調査を実施済みで、本年度はデータの集計と合わせて補足調査を行った。
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