本研究は、生態系と調和しつつ経済的に自立可能な農業経営をエコエコ農業、あるいは「低投入高産出」型農業と呼び、その確立のための諸条件を検討するものである。地域の自然環境、社会経済条件を踏まえたアプローチが必要であり、個別農家レベルに加えて地域レベルでのエコエコ農業確立の課題を技術的経済的に解明することを目的としている。 本年度は、有機廃棄物の循環利用に関する地域的取組みを主たる課題に設定した。その代表は堆肥センターを軸にした資源循環システムであると考えられるので、長野県臼田町、茨城県美浦村、および福島県本宮町で堆肥センターの実態調査を実施した。このうち、臼田町は生ゴミ、美浦村は馬糞、また本宮町は浄水場の汚泥ケーキを原料とした堆肥を製造している。また、環境保全型農業の実践事例としては、長野県佐久市農協、福島県会津みどり農協、会津いいで農協、山形県米沢郷牧場、福島県川俣町やまなみ農場などを対象に調査研究を行い、貴重な情報を入手した。 加えて、新潟県上越市で水田における緑肥導入の技術的課題を検討するため、レンゲ栽培実験を継続実施した。同時に、生物的雑草管理の可能性を検討するため、エアリーベッチの栽培試験も行った。この牧草には緑肥としての利用だけでなく、他の雑草繁茂を抑制する効果が期待されている。 インドネシア・バリ島高地の野菜栽培地帯において低投入型野菜栽培の技術的課題を解明するため、科研費基盤研究(A)(2)で調査研究を継続実施した。当地では、195戸の個別農家の質問票調査や野菜間混作栽培実験を実施済みで、本年度は補足調査および報告書の取りまとめを行った。
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