生態系と調和しつつ経済的に自立可能な農業経営をエコエコ農業、あるいは「低投入高産出」型農業と呼んでいるが、本研究ではその確立のための諸条件を検討した。とくに地域の自然環境や社会経済条件を踏まえたアプローチが必要との認識に立って、個別経営レベルのみならず地域レベルでの資源循環システムの構築に向けた技術的経済的課題の解明を目的とした。 有機廃棄物の循環利用における地域的取組みに関しては、長野県臼田町、茨城県美浦村、山形県米沢郷牧場、福島県本宮町、静岡県函南町での事例研究によって、堆肥センターの機能と地域農業発展における役割を中心に検討した。堆肥センターは、十分な家畜糞尿が確保できる地域においては重要な役割を果たすが、原料が不十分で施設が過大規模になっている事例もある。しかし、いずれの地域でも堆肥の利用によって有機農業・環境保全型農業を軸とした地域農業振興が成果をあげている。一方、有機農業の先進事例である福島県熱塩加納村において農家質問票調査を実施し、水稲有機栽培の展開過程および経済的技術的課題について解明した結果、米価下落に加えて、堆肥センターなど地域循環システムの欠如が有機農業の収益性を低下させていること明らかになった。 さらに、新潟県上越市の水田で緑肥栽培実験を繰返し実施した。レンゲとヘアリーベッチを用いたが、レンゲの雑草抑制効果は認められなかった。ヘアリーベッチは9月中旬に播種すれば、翌年の雑草を抑制し、10a当たり13.7kgの窒素を還元することが明らかになった。また、インドネシア・バリ島高地の野菜畑で5種類の緑肥栽培実験を行った。ヘアリーベッチは良好に生育したが、種子が形成されないことがわかった。環境保全型農業の推進には緑肥と経済作物の輪作および間作体系の確立が課題として残っている。
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