改革以後の移行経済では、マクロ経済の安定を基礎にして、生産・流通部門における経済活動の担い手となる近代的経営組織の発展とそれらの活動を保障・支援する新しい制度の確立を念の経済・社会政策の導入が必要視されている。本研究は、東欧・中央アジアの農業部門に焦点を絞り、新旧の生産・流通組織の構造と効率性の変化を横断的に比較分析・理解し、その結果をもとに政策分析を行い、移行経済が持続可能な経済成長を遂げるための政府の役割に関する包括的な政策的含意の導入を図ることを目的としている。初年度である本年度の研究実績は、以下の通りである。 1 移行軽済における経済改革に関する内外の研究成果についてサーベイが実施された。農業に関しては、農地や他の農業生産投入材の所有権の移転を含む制度・組織の改革が、移行国における改革以後の農業部門のパフォーマンスを規定してきていることが確認された。 2 ハンガリーの中央統計局が実施した農家調査データ(1992年と1994年)を入手し、計量分析が可能になるようなデータベースが構築された。そして、生産・流通絹織の構造と効率性の変化を分析するためのモデルが構築された。 3 さらに、2で準備されたデータベースとモデルを使用し、農業生産組織ごとの生産・経営効率性の違いについて、その決定要因が分析された。そこでは、経営者の受けた教育・研修レベル、生産規模、生産投入材の使用度合が経営の効率性を決定する要因となっていることが、統計的に確認された。
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