1990年、1995年農業センサス調査結果から農業サービス事業体の動向に関する統計分析を行い、組織形態別、作目別、受託料金収入規模別、受託農家規模別、地域別に農業サービス事業体の展開動向を明らかにした。それによると主要な作目部門において、農業サービス事業体により農作業受託サービスが多様に行われ、各農業事業体での農作業の外部化が相当程度進行している事が明らかとなった。耕種部門では、稲・麦作で農業サービス事業体の利用割合が高く、作業別では乾燥・調製作業の利用割合が高い、ことなどが示された。これにより土地利用型農業の展開にとり、農業サービス事業体が一定の役割を果たしてきている状況が確認された。 次いで、熊本県大津町の米麦作型機械利用組合の実態調査結果から農業サービス事業体の展開論理と機能について考察した。それによると、一方での圃場整備の実施とそれにともなう機械・施設の高性能化等という農業生産力の高度化と、他方での農家の階層変動の進行による兼業化や専業層の複合部門への傾斜による米麦作への省力化の要請により、地域ぐるみで農業サービス事業体が展開していることが明らかとなった。これにより土地利用型農業において省力化が進められ家族農業経営が補完されている実態も明らかにされた。こうした農業サービス事業体の展開は低コスト生産体制を進める行政の支援措置に大きく支えられており、地域での低コスト化をも実現している。その意味で、農業サービス事業体が省力化により家族経営を補完する機能とともに低コスト生産体制を誘導する機能も有していることが明らかになった。
|