地域農業再編に果たす農業サービス事業体の役割を文献整理、統計分析、実証研究により明らかにした。第一に、経済のグローバル化に伴う農産物価格の低迷を主因として農業の担い手不足などに示されるような地域農業の空洞化が進行し、地域農業の再編が余儀なくされている状況を明らかにした。そして第二に、最近では農業サービス事業体はそうした地域農業の再編過程で形成されているケースが多いことを明らかにした。直接的には個別経営体での労働力不足対策として農業サービス事業体が組織され、生産過程の一部を請け負うことにより個別経営体を補完する機能を有していることを指摘した。第三に、生産コスト分析を通じて農業サービス事業体が省力化効果とともに低コスト化効果にも一定程度寄与していることを明らかにした。特に、圃場整備事業と一体化して形成された機械利用組合などの農業サービス事業体にはその効果が顕著にあらわれている。 第四に、土地利用型部門での農業サービス事業体の展開を契機として、集約的部門の新たな経営展開や地域作りの動きが作り出される地域が散見されることを確認した。これにより担い手農家の経営基盤がより強化されるとともに、女性・高齢者に新たな就業の場が確保されるなど地域で新たに仕事が創造されていること、そしてそれを通じた地域コミュニティーの活性化などの副産物も生んでいることを明らかにした。これは農業サービス事業体の形成を契機とした農村内部からの内発的発展として評価できる。今後、地域農業再編が余儀なくされる状況の中で、地域の特性に応じた農業サービス事業体が適正に形成されるならば、個別経営体の展開条件も幅をもったものになると思われる。
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