研究概要 |
近年農業規模は拡大化を指向し,大規模な山成畑,改良山成畑などが造成され,傾斜地の開発利用は増大する傾向にある.また一方レジャー産業の広がりに伴い,山野のオフロード車の走行による環境破壊に伴う土壌流亡の増大も問題となっている.これら地域における傾斜地の利用・裸出は,土地が勾配をもつことから土壌流亡を生じ,環境破壊の一因ともなっている. このような土壌流亡の問題には、土壌流亡を抑止することと土壌流亡に伴う濁水の浄化が考えられる。まず土壌流亡抑止に関しては、ヒドロキシアルミニウム(PAC)を用いて、その添加により団粒化が促進され耐水性が強まった。このことが雨滴侵食への影響としてPAC添加により土塊の強度が増加し、またその濃度増加に伴い土塊は破壊されにくくなったが、ある一定濃度を越えると効果が鈍る傾向がみられた。一方、表面流による侵食実験からPACの濃度の違いが流力ヘ与える影響に検討を加え、その添加効果があることを示唆している。 次に土壌流亡に伴う濁水の浄化に関しては、土砂濁水を薬品処理を行わず、人工フィルター4種類と浄化材3種類を用いることで物理的に浄化しその効果について検討を加えた。浄化施設は現場を想定し、その1/10規模の模型を用いて実験を行った。実験結果から粗砂程度の透水性をもつフィルターでもこれを様々に組み合わせることでかなりのSS(懸濁浮遊物)が除去できることが分かった。またフィルターの空隙の閉塞状態は透水性とフィルター吸着性が背反的な事象であるため、人工フィルターを用いる浄化には自ずと限界が生じ、よってSS濃度が高く流入量の大きな洪水時等の濁水処理には限界があることが分かった。このことは既存の沈砂池等と組み合わせることで効果的な水質の浄化を進めることができると考える。
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