研究概要 |
土地の乱開発は自然の生態系を壊し,土壌流亡を引き起こす.土壌流亡を解明するために降雨シュミレータ侵食実験及び雨滴・流出実験を行い,土壌流亡抑止について検討を加えた. 降雨シュミレータ侵食実験により,浸透水量は高い塩濃度を示す土壌ほど多い.また浸透を妨げる第一因子としては,土層内で発生する細かい土粒子による透水間隙の目詰まりが主な要因である.クラストは,高いESPを有する土壌ほど早く形成される.これらの形成は土壌の分散・凝集によって説明できる.また,その形成により流出土量の粒径組成は,原土の粒径組成に近づく傾向にある.浸透水量・流出土量ともに塩類による影響が認められる.流出土量においては,ピーク時の流出土量で塩濃度が高いほど多い.しかし,全流出土量においては,塩濃度だけでは説明ができない点がある.今後は,侵食機構の解明には土の構造や透水性をコロイドの特性の面から検討する必要がある. 土壌流亡抑止は水質浄化剤であるPAC(ヒドロキシアルミニウム)を用いて実験を行い検討した.水田土はPACを使用することで団粒化が促進される.また非排水せん断強さが増加することで雨滴の衝撃力による団粒破壊を防止する.しかし,PACはその濃度を濃くすればするほど効果的というわけでなく,ある一定の濃度を越えると効果が上がりにくくなる傾向にある.水田土にPACを添加することは,土壌の透水性,排水性の向上,砕土性の改善が期待できる.さらに,流水による土壌流亡は団粒が増加し,粒状構造が発達することにより軽減される.しかし,実際の圃場において,PACの効果がどれ程期待できるのかさらなる検討が必要である.
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