研究概要 |
本年度の実績は三つに大別される。一つは従来からの継続調査の実施、二つ目は本年度集中的に実施した課題調査、三つ目は次年度以降の研究展開のために必要な予備調査を実施した。 1. 継続調査では、調査3集落の約1,600区画の農地を対象に、水稲作付後の農業的土地利用と目に見えない被害の調査を行った。その結果、農業的土地利用に対しては圃場整備実施の有無、ため池水利の安定度が大きく影響し、目に見えない被害では農家はその復旧に苦慮している実態が明らかとなった。 2. 課題調査では、調査集落のうち未整備地区の集落を対象にして詳細な水利慣行調査を行い、水利再編と圃場整備実施へのプロセスを調査した。その結果、未整備集落では耕作放棄地の発生・拡大によって、農家の水利権と耕作反別が一致しない場合が生じ、規模縮小農家からは水利権の放棄や改正を求める声が上がっていた。こうした動きは、震災の発生とその後のため池貯水量の減少による、作付け不能水田や作付け制限の実施によって一気に表面化し、集落の比較的若い階層の農家が中心になって水利の再編が行われた。水利慣行が改正されることで集落は活性化し、震災で中断していた圃場整備導入を決断した。 3. 次年度以降の研究展開のための予備調査には二つあり、一つは、未整備地区の集落に関する村づくり計画作成のための資料収集及び集落関係者との打ち合わせを行った。もう一つは、未整備地区の調査集落における水利慣行の改正が、ただ単に特殊な事例であるのか、あるいは淡路島のため池地域に共通する普遍性を有するかどうかを検証するために、周辺の2町の役場において、震災の復旧事業で深井戸を設置して水源を増強した地区を対象にした資料収集と聞き取り調査を実施した。
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