研究概要 |
本研究では、淡路島・一宮町の農村を対象に、大震災による被害と復興について検討した。本研究の成果は、継続調査、比較検討調査、実験的調査で得られた以下の諸点である。 (1)継続調査は、震災後、3集落(園出・入野・深草)の約1,600区画の農地を対象にした毎年の農業的土地利用調査である。5年間の調査の結果、水稲作付面積は3集落共に減少しているが、大きな減少の翌年には回復が見られた。特にため池被害によって不作付けが生じた深草では、用水の確保によって作付けが回復した。しかし、裏作は、主作物のタマネギの作付けが減少し、年間の土地利用率を低下させている。 (2)比較検討調査では、震災を契機とした行われた未整備集落・深草における水利慣行の改正が、特殊事例であるのか、あるいは被災地のため池地域に共通する普遍性を有するかどうかを比較検討した。平成8年度の災害復旧で深井戸を設置した地区を、東浦町で5地区、北淡町で4地区選定して聞き取り調査を実施した。比較検討した調査対象地区では、震災後水利慣行の変わった地区はなかった。この結果、深草集落の事例は特殊であり、ほ場整備を控えていた特殊要件が背景にあったことが明らかとなった。 (3)実験的調査では、未整備集落の深草が平成11年12月からほ場整備工事に着手したので、事前に「傾斜地水田におけるほ場整備計画支援システム」を用いて、ほ場整備計画図を三次元CGによって検討し、問題点を町役場及び深草集落に提示した。問題点は道路配置により区画配置・法面の大きさ・つぶれ地の大きさ等が変化することであった。これらの問題点は、町役場及び深草集落でも検討され、結果が施工図に反映された。
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