研究概要 |
大別すると,ため池モデルのシミュレーション解析と,淡路島被災ため池調査結果のGIS分析を実施した. 1. 境界要素法を用いた2次元パラメトリック数値解析により,様々な形状を有するため池モデルに対し,振動方向を変化させた場合の地震動水圧を算定した.次に,その結果をパラメータ毎に整理し,回帰曲線として表すことで,全圧力値,その作用点位置と作用方向,全モーメント値を簡易に推定するためのノモグラムを作成した.加えて,より正確な値を求める際に有効な,回帰曲線式の全係数値を容易に求めるためのチャートも提示した. これにより,現行の設計基準では対応し得ないケース,すなわち,フィレットを敷設した場合や,上下流方向ではなく斜方から地震波が伝播した場合にも,精度良く動水圧を推定することが可能となった. 2. 兵庫県南部地震により被災した淡路島のため池を対象に,これまで我々の行ってきた現地調査結果,および各市町等より入手した震災情報に対しGISを適用し,視覚的に被災原因の追究を試みた.その結果,被害ため池数は,一般に言われているとおり活断層に近接しているほど多いこと,地質的には砂礫質や花崗岩類の層上に,また地形的には傾斜角が5〜15°の地盤に,各々築堤されているため池に多く被害のあったことが分かった. さらにその後,重回帰分析と数量化理論I類による多変量解析をも実施し,要因変数の抽出も行ったところ,震央距離,総貯水量,堤体量,堤軸方向等の寄与率が高いことが判明した.しかし,震央から離れた西淡町に被害ため池が偏在している点に注目し,別途,統計解析を行ったが,その原因に関し確たる知見は得られなかった. 今後,これら初年度に得られた知見を踏まえ,高知県東部に点在する老朽ため池のうち,大規模な数箇所をピックアップし,改修の必要性やその緊急度に関し提言を与えることを目論んでいる.
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