本研究では、干潟域マクロベントスによる生物的撹乱とその底泥環境さらには栄養塩類の濃度分布への影響について、現地観測及び分析データを基に考察された。この研究によって得られた主な知見を要約すると、次のようになる。 1.試験区域に生息するマクロベントスの種類と生息数の分布が把握された。さらに、マクロベントスの生息数と潟面の巣穴数の分布は、気温や泥温によって大きく影響されることが明らかにされた。 2.底泥中の酸化還元電位(Eh)とマクロベントスの生息数及びその巣穴数の分布との間に、密接な関連性の存在が確認された。したがって、底泥環境に影響する最も大きな生物的撹乱は、マクロベントスによる巣穴形成であると推察された。 3.底泥中の酸化的及び還元的な層の鉛直分布は、潮汐の干満とマクロベントスによる生物的撹乱力の変動によって大きくかつ周期的に変化すると推察された。 4.マクロベントスの生息数及び巣穴数の分布と底泥中のEh及び底泥間隙水中のNH_4^+やNO_3^-濃度の鉛直分布との間に、密接な関連性が確認された。 5.底泥中の有機物の分解・無機化、すなわちバクテリアによる栄養塩の生成過程は、潮汐の干満と底泥中のマクロベントスによる巣穴形成による環境変化により効率的に生起すると推察された。 6.底泥中の栄養塩の濃度分布に影響する物理的作用の一つである、波と流れの共存場における底泥の巻き上げ現象のメカニズムが、実験的かつ理論的に明らかにされた。
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