本研究では、青果物の呼吸を「酸素を消費し二酸化炭素を排出する」という一つの反応と見なし、酸素と二酸化炭素をそれぞれ反応基質と反応阻害物質としてとらえた。そして、ブロッコリについて酸素濃度が一定で二酸化炭素濃度が異なる種々の条件下で呼吸速度を測定して二酸化炭素による呼吸阻害機構を解明に取り組んだ。 測定された呼吸速度を一般的な酸素反応速度論で多用されているMichelis-Menten機構に基づいて解析して、炭酸ガスによる阻害形式を拮抗型、非拮抗型、反拮抗型、混合型に分類し、Michaelis定数(Km)、阻害定数(Ki)、最大速度(Vm)等の反応動力学的定数を算出した。 CO_2排出速度と環境O_2濃度の両逆数プロットを作成したところ、CO_2濃度0.3%と5.8%の近似直線は特徴的な折れ曲がりが認められ、ブロッコリの呼吸反応におけるCO_2阻害形式は、酸素濃度18%を閾値として異なった形式に移行することが示唆された。すなわち、高酸素濃度域での直線は、呼吸速度軸上で互いに交差していることから、CO_2の阻害形式は拮抗型であると考えられ、一方、18%以下の低O_2濃度の範囲では、近似直線は互いに平行しており、不拮抗阻害型であることが示唆された。ところが、CO_2濃度11.2%ではこうした折れ曲がり現象は認められず、このCO_2濃度では、いずれの酸素濃度でも不拮抗型阻害であることが示唆された。 今後は、低温障害やガス障害をうけた青果物について算出したパラメータと阻害形式を個体レベルの性質と関連させて検討する。
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