我が国では現在、米は大半が玄米の形態で低温貯蔵されている。中・長期的な米の貯蔵のため、近年普及が進んでいるクリン米で貯蔵することによる低コスト化の可能性を検討した。貯蔵形態として、籾、玄米、白米、クリン米2種を選んだ。また、玄米の肌ずれが品質変化に及ぼす影響を考察した。含水率と貯蔵温度を2段階に設定し、経時的に粒表面色、脂肪酸度、食味値などの品質指標値を測定して形態の特長を比較した。いずれの品質指標値も高温、高含水率での貯蔵の時に劣化の方向に変化することが確認された。特に、通常白米が変質が大きく、貯蔵の形態としては最も不適当であった。クリン米1とクリン米2は25℃貯蔵でも比較的変質量が小さい。また、15℃貯蔵ならば、15%WB程度の含水率としても変質幅は小さかった。したがって、クリン米による貯蔵はコスト面で有利であると判断された。籾形態による貯蔵は大きな容積を必要とするためほとんど行われていないが、品質維持の立場からは最も優れた方法であり、今後、選択肢に加える必要がある。なお、玄米の容積を1とすると、籾、白米、クリン米の容積は、それぞれ1.62、0.89、0.86となる。玄米貯蔵をクリン米貯蔵に切り換えれば容積が14%減少し、貯蔵倉庫の効率的な運用が可能となる。 次に、玄米貯蔵において、含水率と貯蔵温度以外に肌ずれの程度も品質の変化に大きな影響を与えることが明らかとなった。そこで、玄米を扱う施設において、搬送等のハンドリングが進む順序で試料を採取し、肌ずれ程度と脂肪酸度の増加割合を測定した。その結果、機械的なハンドリングは肌ずれを増加させ、変質が早くなることが明らかとなった。現実問題として、施設での各種ハンドリングで肌ずれをできる限り小さくする方策を検討することが必要である。
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