研究概要 |
車輪の走行性を精度よく予測できれば,農業機械の設計あるいは効率的利用に役立つだけでなく,最近注目されている自律走行や無人走行に必要な高精度の制御にも適用できる。本研究では車輪走行性の高精度予測法の確立を目的として,従来の接地応力の予測モデルにすべり率の影響などを加えたモデルを提案した。さらに,剛性車輪による砂地盤での走行実験結果と比較して提示した予測モデルの評価を行った。主な結果は次の通りである。 1) 車輪走行実験によって接地応力の分布特性と沈下量の経時変化を把握し,接地応力の予測に必要な接地面の幾何学特性と沈下量の関係を示した。 2) 提案したモデルによる接地応力分布は実測値に近く,高い精度で予測できることを示した。ただし,低すべり率における負の接線応力は予測できなかった。 3) 回転初期における法線応力は狭い範囲に分布して最大値は高く,接線応力の値は全般に低い。回転に伴って法線応力の分布は次第に広くなって最大値は減少し,接線応力は急激に増加してピークが前方に移動する傾向を表現できた。 4) すべり率に対するけん引力やトルクの予測値の傾向は実測値とほぼ同じであり精度よく予測できた。全般に,けん引力よりトルクの予測値がよく適合している。 5) 走行に伴うけん引力やトルクの経時変化もある程度予測できた。高すべり率ではけん引力が実測値と同様にピークを示す変化を表現できた。 6) すべり変位量に対する考察を行い,Janosiモデルによる予測値は実際よりかなり大きく見積もることを示した。 今後,走行車輪下の土の変形状態を詳細に解析し,接地応力に大きな影響を及ぼす沈下挙動の検討を行う予定である。
|