研究概要 |
車輪の走行性を精度よく予測できれば,農業機械の設計あるいは効率的利用に役立つだけでなく,最近注目されている自律走行や無人走行に必要な高精度の制御にも適用できる。本研究では車輪走行性の高精度予測法の確立には,車輪下の土の変形を詳細に解析することと,けん引力の発生メカニズムを明らかにする必要がある。後者に関してはけん引力の変動現象に解決のポイントがあると判断して,精密土槽実験装置を用いて実験的解析を行った。主な結果は次の通りである。 (1)回転開始時にけん引力がピークに達するまでの接地面近傍の土の変位増分は,けん引力増分と負の相関関係があることがわかった。これは,初期状態におけるけん引力増分の低下は土の変形量が増加することによるものであることを意味している。 (2)車輪を100°回転(すべり率21.9%)させた後の土中の各種ひずみ分布をみると,表層付近に局所的に集中しており,その大きさと領域にはムラがあることがわかった。これは,定常けん引力が低下する時には接地面近傍の粒子が水平方向に相対的に大きく動くために発生したものと予想できる。 (3)これを確かめるために,表層から第1層目と第2層目のマーカの水平変位(増分)の合計値の差すなわち相対変位(増分)を求めて回転角度毎にプロットしてその波形を調べた。これより,表層付近の土の相対変位(増分)の周期とけん引力波形の主要周波数成分の周期がほぼ一致することより,けん引力の変動は主として土の変形によることを明らかにした。 (4)車輪近傍の土粒子は車輪の接近,通過に伴って円を描くように変位する。間隙比の大小に係わらず同様な傾向を示すことが明らかになった。深い位置においても同じ傾向がみられるが,軌跡円のサイズは深くなるに伴って小さくなる。
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