研究概要 |
本研究は,乾燥地・半乾燥地における農業および生活用水確保のため,太陽エネルギー直接利用による高効率的な塩水淡水化システムを開発することを目的としている。 平成11年度においては,太陽エネルギー直接利用の水盤型ソーラースチルについての非定常熱収支解析を基に集水性能の改善を検討し,次いで蒸発促進機能を付加した新規システムの集水性能に関する実証実験を行い,システム設計の基本的指標を提出した。 研究結果は以下の通り。 1)水盤型ソーラースチルにおける非定常収支解析に基づく集水性能算定法により,自然環境条件としての日射量,外気温および外風速,装置設計要素としての水盤表面における日射熱吸収率,水盤・凝集面積比,水盤水深,底面熱損失および被覆材熱伝導率などが集水性能に及ぼす影響を定量的に検討した。日積算日射量が同等の場合,日射ピーク値の高い日射変動パターンの方が集水量は大きく,また,外気温が高く,外風速が小さい方が集水効率は良好となることが示された。 2)ソーラースチル水盤からの蒸発を促進するため,(1)水盤への超音波付加,(2)水盤表面への放射熱吸収材の敷設,(3)蒸発面積拡大材の設置について実験的に検討を行った。超音波付加によるソーラースチルについて,室内定常実験では約20%,屋外自然条件下では約10%の集水量増加が図られた。しかしながら,理論的には外部エネルギを超音波として付加することの熱効率的利点は確認されていない。水盤表面への放射吸収材の敷設により,水盤水表面温度が上昇し水盤内温度分布の改善が図られ,集水量は約20%増大した。蒸発面積拡大部材の設置により約35%の集水量増大が示され,とくに低高度の日射の効率的利用が図られた。
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