本研究では、挿し木(挿し芽)苗生産における、根・シュートの分化および成長促進のための環境調節法について検討する。根・シュートの分化および成長には炭水化物を必要とし、そのため光合成速度を高めることが、挿し木(挿し芽)の成長促進をもたらすと予想される。本年度は、CO_2濃度の異なる条件下で挿し木(挿し芽)を生育させ、CO_2濃度が根の成長に及ぼす影響について主に検討した。試験には、通常、栄養繁殖されている植物としてバラ(品種:ティネケ)を供試した。試験概要は以下の通りである。 1. CO_2濃度と根部およびシュートの成長 CO_2濃度の異なる試験区(CO_2施用区:昼間1000ppm1無施用区)を設け、生育試験を行った。挿し木30日目の根部の重量は、CO_2施用区が無施用区の1.4〜1.6倍となり、CO_2施用により根の成長促進がみられた。また、CO_2施用は、シュートに対しても、根部ほどではないが成長促進効果があることが認められた。 2. 挿し穂葉面積の影響 挿し木では、蒸散過多による萎れや枯死を避けるために、通常、葉の一部を切除した挿し穂を用いている。しかし、1株当たりの光合成量は葉面積によって異なる。そこで、バラ挿し穂の小葉枚数が挿し木の生育に与える影響をみた。その結果、小葉枚数が増えると、根部の成長はわずかに促進されたが、シュート成長はむしろ抑制された。 3. 発根促進剤の効果 発根促進剤処理の有無とCO_2施用の有無を組み合わせた生育試験から、発根促進剤処理によって根部の成長は促進されたが、シュート分化はかなり抑制されることが示された。 以上の結果から、根およびシュート両方の分化および成長にとって、CO_2施用が効果的であると考えられた。
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