本研究では、挿し木(挿し芽)苗生産における、根・シュートの分化・成長促進のための環境調節法について検討する。根・シュートの分化・成長には炭水化物を必要とし、そのため光合成速度を高めることが、挿し木(挿し芽)の成長促進をもたらすと予想される。前年度は木本生植物であるバラ(品種:ティネケ)を供試したが、本年度は草本植物のキクを供試し、CO_2濃度の異なる条件下で挿し芽を生育させ、CO_2濃度が根およびシュートの成長に及ぼす影響について発根促進剤処理との関係で検討した。試験概要は以下の通りである。 1.CO_2濃度が根部およびシュート成長に及ぼす影響:CO_2濃度の異なる試験区(CO_2施用区:昼間1000ppm、無施用区)を設け、生育試験を行った。揮し芽20日目の根部乾物重量は、CO_2施用区が無施用区の約1.4倍となり、CO_2施用による根の成長促進がみられた。また、シュート乾物重についても、CO_2施用区が無施用区の約1.2倍となり、CO_2施用によるシュート成長促進効果が認められた。 2.CO_2濃度が挿し穂の光合成速度に及ぼす影響:挿し芽の光合成速度をチェンバー法により、栽培時と同じCO_2条件下で測定した。その結果、CO_2施用下での光合成速度は、CO_2無施用下でのそれの1.5〜2倍であった。 3.発根促進剤処理の効果:発根促進剤処理の有無とCO_2施用の有無を組み合わせた生育試験から、CO_2施用の有無にかかわらず、発根促進剤処理によって根部の成長は促進された。他方、発根促進剤処理によってシュート成長が抑制される場合があった。根部およびシュートの両方の成長は、CO_2施用かつ発根促進剤処理によって最も促進され、CO_2施用と発根促進剤処理の組み合わせが効果的であると考えられた。
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