研究概要 |
(1) 鶏浅胸筋における筋細胞内ユビキチンの局在を組織化学的に検討した。屠殺直後および熟成させた浅胸筋の凍結切片を抗ユビキチン血清で染色すると、屠殺後の経過時間に関わらず細胞質全体に陽性反応が認められた。なお、ユビキチンの染色性は、凍結に先だって試料を加熱処理すると向上することが判明した。これらの結果から、鶏骨格筋筋漿画分で電気泳動的に確認されたユビキチンは、筋細胞に本来的に存在すると結論した。 (2) 牛心筋の細胞質(筋漿)にはユビキチンが存在し、屠殺7日目まで量的にほとんど変化しないことを電気泳動的に明らかにした。さらに、屠殺直後に認められたユビキチン陽性のバンド(約30kDa)は貯蔵に伴い消失することを見出した。 (3) サルの骨格筋(下肢部7筋,上腕部3筋)から筋漿を実験殺直後に調製しSDS-PAGEに供すると、全体的な泳動パターンは筋肉間および動物間(サル・牛・鶏・シカ)で類似していた。しかし、2次元電気泳動像ではサルの縫工筋および内転筋において、他の筋には存在する数個のスポットが欠失していた。抗ユビキチン血清による免疫染色を行うと、8kDaのユビキチンに相当するバンドは、全ての筋試料で染色されたが染色強度は異なっていた。さらに抗ユビキチン血清に陽性なバンドは大腿四頭筋(約40kDa)のみ陽性反応が認められた。 ◎ 牛骨格筋ではユビキチンおよびユビキチン化タンパク質と考えられるバンドが熟成完了時にはほぼ消失したが、心筋においては、この分解によると考えられるバンドの消失は認められなかった。このことは、個体死後の筋細胞の崩壊過程において、細胞内タンパク質分解系の構成要素や寄与の度合いなどが骨格筋と心筋では差のあることを示唆する。また、ユビキチン化タンパク質と考えられるバンドの分子量は、動物間や臓器間で異なるため、次年度にはこれを単離し構造を解析する予定である。
|