研究の目的:平成11年度は、牧草地からの硝酸態窒素溶脱量を調査する予備段階として、採草地において、化学肥料の施用量が、土壌中および牧草の硝酸態窒素含有率、牧草の収量に及ぼす影響について調査を行った。 調査項目と調査方法:東京農工大学津久井農場の採草地(トールフェスク、オーチャードグラス、ホワイトクローバーの混播)で調査を行った。窒素施肥量をhaあたり年間で96kg(C1)、192kg(C2)、288kg(C3)、384kg(C4)とした試験区を設定した。施肥は4月28日と9月3日(刈り取り後)行い、刈り取りと土壌(0〜5cm)のサンプリングは5月23日、9月3日、11月20に行った。土壌中および牧草搾汁液中の硝酸態窒素含有率、牧草収量を測定した。 結果と考察:1番草刈り取り時(5月23日)には施肥量の違いにより土壌中および牧草中の硝酸態窒素含有率に違いがみられ、C1区では土壌中が40mg/kg乾土、牧草中が200mg/L、C2区で50mg、600mg/L、C3区で90mg、1000mg/L、C4区で125mg、2200mg/Lであった。両者の間には1%レベルで有意な正の相関関係が認められた。2番草および3番草刈り取り時には、試験区ごとの土壌中および牧草中硝酸態窒素含有率の違いは明確でなく、両者の間の相関関係も有意ではなかった。牧草収量は1番草で最も高く、3〜5kg生草/m^2の範囲にあり、2および3番草では1.5〜3.3kg生草/m^2の範囲にあった。すべての刈り取り時において、試験区ごとの収量の違いは認められなかった。 以上の結果より、特に2番草以降では、C2区以上の増肥は、牧草収量および牧草による硝酸態窒素吸収量の増加をもたらしたとはいえず、硝酸態窒素の溶脱量を増加させていると推察された。
|