本研究では飼料価値を栄養成分の消化管内における動態と消化管組織からの吸収の二面から評価することを試みており、現在、以下の知見を得ている。 1. 消化管内における栄養成分の動態: 反芻胃、十二指腸、回腸に消化管カニューレを装着した子牛、6頭を供試し、反芻胃内分解度の異なる蛋白質源(尿素、魚粉)を給与し、消化管部位別(反芻胃・小腸・大腸)での消化性を調べた。その結果、(1)魚粉給与は尿素給与に比べて、窒素の反芻胃内でのみかけの消化率は低くなったが、小腸内消化率が高くなり、これは離乳直後の子牛では、魚粉蛋白質に比べて、微生物蛋白質の小腸内消化率が低いためであることを明らかにした。(2)必須アミノ酸でみても、(1)と同様なことが認められた。これらの知見は、飼料の栄養価値を従来の全消化管消化率で評価することの限界と問題を示している。 2. 消化管組織からの栄養素吸収: 腸管膜動静脈、門脈にカテーテルを十二指腸にカニューレを装着した育成牛4頭に魚粉を4段階給与し、吸収栄養素の面からの評価した。その結果、(1)魚粉給与の増加に伴う体重当たりの窒素摂取量に対して、アンモニア態窒素の吸収量はY=0.34X-0.07、α-アミノ態窒素吸収量はY=0.42X+0.02の関係にあった。これらの式から魚粉蛋白質のアミノ酸吸収効率は42%であることが判明し、従来、消化管組織からのα-アミノ態窒素吸収量はアンモニア態窒素吸収量よりも少ないという定説を覆すものとなった。(2)現在、十二指腸移行の栄養成分量と、個々の吸収アミノ酸およびグルコース、乳酸の吸収量について分析と解析を進めているところである。(3)今後、対照区としての大豆粕給与に伴う栄養素吸収についても明らかにし、また粗飼料と濃厚飼料割合の影響についても検討する予定である。
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