研究概要 |
酸性ホスファターゼのチーズ熟成への寄与を解明するために今年度は、牛乳由来酸性フォスファターゼおよび乳酸菌プロテイナーゼを精製し、それらの性質を明らかにした。さらには、チーズ熟成中での発生が予想される酸性ホスファターゼとプロテアーゼ類との協同作用(熟成メカニズム)について検討した。 1)牛乳由来の酸性フォスファターゼの精製と性質。 新鮮牛乳から調製したバターミルク(BM)と脱脂乳(SM)をAmberlite IRC-50(NH^+_4 ),DMAE-Cellulose,Sephacryl S-200にかけることによって行われた。BM中にlつ、SM中に2つの活性が認められた。これらのうち主なBMおよびSM酸性ホスファターゼの最適pH、温度は、ともにpH4.5-5.5、40°Cであった。熱安定性は、75°Cの加熱に対しBM酵素はl0分間、SM酵素は60分間で完全に失活した。他、検討した性質から、牛乳中に酸性ホスファターゼのアイソザイムの存在が示唆され、それらは脱脂乳中またはMFGMに結合していると思われる。 2)Lactococcus lactis ssp lactis IAM1198プロテイナーゼの精製と性質 L.lactis IAM1198から、各種クロマトグラフィーによってエンドペプチダーゼを精製した。本酵素は分子量が95,000で、45kDaと52kDaのへテロサブユニットで構成されていると推定された。本酵素のcarbobenzoxy-L-phenylalany-L-arginine-4-methyl-coumaryl-7-amideおよびL-arginine-4-methyl-coumaryl-7-amideに対するKm値は、それぞれ38μMと25μMであった。本酵素はエンドぺプチダーゼとアミノぺプチダーゼの両活性を示した。 3)酸性ホスファターゼとプロテイナーゼとの協同作用について 乳/乳酸菌由来の酸性ホスファターゼ類を作用させた後のカゼイン/ホスフォぺプチドに対する乳酸菌プロテアーゼ類の活性は、細胞膜由来乳酸菌酸性ホスファターゼを作用させたホスフォぺプチドに対し高い活性が認められた。これらから、特に細胞膜由来乳酸菌酸性ホスファターゼが熟成中の脱リン酸化に関与していると思われる。
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