研究概要 |
チーズ中における酸性ホスファターゼの寄与を明らかにし、高品質チーズ製造への基礎的知見を得ることを目的とし、以下の実験を行なった。 1.乳酸菌由来酸性ホスファターゼ 酸性ホスファターゼ(AP)活性が高いLactococcus lactis ssp.Lactis303からAPを精製しそれらの性質について検討した。細胞膜(CM)と細胞壁由来(CW)の2種のAPの存在が示唆された。それらの至適pH、温度はともにpH5.0-5.5,50℃であった。酵素の熱安定性は異なり、CM酵素の方が強い耐熱性が示された。また、両者ともカゼインホスフォペフチドからはリンを遊離したがカゼインからは遊離しなかった。 2.牛乳由来酸性ホスファターゼ 牛乳中に存在する酸性ホスファターゼ類の性質を検討し、それらが1種以上の酸性ホスファターゼであることを示唆した。バターミルク(BM)中に1つ、スキムミルク(SM)中に2つの活性が認められた。牛乳中にAPのアイソザイムの存在が示唆され、それらは脱脂乳中またはMFGMに結合していると思われる。 3.チェダーチーズ中の酸性ホスファターゼの挙動と熟成への寄与 チーズ熟成に寄与するAPの起源を明らかにする目的で、スターター添加および無添加チェダーチーズを製造し、熟成期間中のAP活性の挙動およびプロテイナーゼ/ペプチダーゼとの協同作用について検討した。チェダーチーズの製造はスターターとしてL.lactis subsp.lactis303を添加した。スターター無添加チーズはgluco-δ-lactoneを用いpH調製を行った。チェダーチーズ中の水溶性画分のAP活性は時間の経過とともに減少し、水不溶性画分およびチーズ全体のそれは微増傾向が示された。また、乳/乳酸菌由来のAP類を作用させた後のカゼイン/ホスフォペプチドに対する乳酸菌由来プロテアーゼ類の活性は、細胞膜由来乳酸菌APを作用させたホスフォペプチドに対し高い活性が認められた。これらのことから、特に細胞膜由来乳酸菌APが熟成中の脱リン酸化に関与していると思われる。
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