研究概要 |
ウシ成熟卵母細胞に対する活性化刺激が発生能と形態に及ぼす影響を知るために,イオノフォアと電気刺激に加え,シクロヘキシミド(CHX)またはDMAPによって活性化したウシ卵母細胞の表面微細構造,活性化率と細胞骨格の配列を検討した。 1. ウシ卵母細胞の表面微細構造の変化 成熟卵母細胞の細胞膜表面には良く発達した微絨毛が密に配列していた。CHX処理1時間後微絨毛は太く変化し,細胞質突起も出現した。処理3-6時間後微絨毛はお互いに接着し合っていた。処理19時間後では形態が回復していた。これに対し,DMAP処理3時間後では,比較的大型の細胞質突起が観察された。処理6時間後では微絨毛と細胞質突起が混在していた。処理19時間後では,伸張した微絨毛に被われていたが,局部的にその分布密度が低下していた。 2. ウシ卵母細胞の活性化率と細胞骨格の配列 成熟卵では染色体周辺に短い樽型の微小管(紡錘体)が形成されていた。イオノフォア処理4時間後では紡錘体がほぼ両極に分かれ,16時間後では12%が前核期に達していた。DMAP処理4時間後では,紡錘体が再形成されたもの(34%)と前核形成を示したものに分かれた(57%)。マイクロフィラメントは卵表層には断続的な層として,細胞質内では多量に凝集していた。処理16時間後では,64%で前核形成が見られた。CHX処理4時間目に染色体の分離が認められ,8-16時間後の前核形成率は32-40%であった。電気刺激4時間後の活性化率は14%で,16時間後には前核形成率が44%に達した。分割溝を示した卵ではマイクロフィラメントが過剰に見られた。今後,ブタ卵母細胞で同様の検討をする予定である。
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