研究概要 |
【目的】卵母細胞の活性化技術は動物発生工学の重要な技術である。そこで,種々の時間体外成熟培養したウシならびにブタ卵母細胞の成熟中の変化や,活性処理後の前核形成率と細胞レベルの変化を観察し,卵の加齢との関連を検討した。そして,発生率の高い活性化技術の確立を図った。【方法】実験1と2では,22-40時間体外成熟させたウシ卵に電気パルス(100V/mm,50μsec),Caイオノフォア(5μM),さらにシクロヘキシミドまたはDMAPとの複合処理を施し,前核形成率と表面微細構造の変化を追跡した。実験3と4では,ブタの体外成熟条件の検討と成熟中の卵丘細胞との細胞間連絡の変化について観察した。実験5と6では,44-60時間体外成熟させたブタ成熟卵に電気刺激(150V/mm,60μsec,2回),Caイオノフォア(50μM),エタノール(7%)処理し,活性率と細胞骨格の変化を検討した。さらに,反復電気刺激とサイトカラシンDが発生率に及ぼす影響を検討した。【結果】実験1と2:ウシ卵母細胞は,卵の加齢が進むにつれ高率に活性化した。また,活性化処理による形態学的な影響も若齢卵に比べ,加齢卵で早期に,かつ高率に現われ,その影響は19時間後には回復する傾向が示唆された。実験3と4:ブタ卵母細胞の成熟中の顕著な変化として卵丘細胞間隙の拡張が見られ,これには細胞外の粘液性物質の蓄積を伴うこと,また卵細胞膜における微絨毛の分布の変化はブタ卵母細胞の細胞質成熟に関連することが明らかにされた。実験5と6:ブタ卵の活性化にはイオノフォアとエタノール処理に比べ,電気刺激が最も有効で,卵の加齢に関わらず高率であった。ただし,加齢卵では細胞骨格の凝集が観察され,フラグメント率も高かった。ブタ成熟卵に反復電気刺激後サイトカラシン処理すると,倍数体が高率に生じ,最も高い胚盤胞発生率(24%)が得られた。
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