研究概要 |
離乳直後の去勢雄メンヨウ8頭を2区に分け、通常飼料または低タンパク質飼料を給与した。20日目に血液を採取し、血清中尿素態窒素濃度が低タンパク飼料給与区において80mg/l以下になっていることにより、タンパク質欠乏状態を確認した。ヒツジは全身麻酔下で肝臓および肋骨成長板軟骨の一部を採取した。肝臓および成長板軟骨より全RNAを抽出し、IGFs特異的なプライマー対を用いてRT-PCRを行った。PCR産物はアガロースゲル電気泳動で分離し、PCRの各サイクルごとのバンドの蛍光発色量を測定し、カイネテックス分析により初期cDNA量の推定を行った。成熟したIGF-Iをコードするエクソン4-6の転写産物は、肝臓において低タンパク飼料給与区で減少したが、成長板軟骨で通常飼料給与区との間に差は認められなかった。成熟したIGF-IIをコードするエクソン8-10の転写産物は肝臓においては低タンパク飼料給与区で減少したが、成長板軟骨では通常飼料給与区との間に差は認められなかった。エクソン1を含むIGF-I転写産物は肝臓では差はなかったが成長板軟骨においては低タンパク飼料給与区で減少が認められた。IGF-IIの各サブタイプの転写産物は、肝臓、成長板軟骨とともにエクソン3,5,6については差は認められなかったが、肝臓のエクソン7は低タンパク飼料給与区で増加する傾向がみられた。総IGFsのmRNAの検討から、肝臓における内分泌的に作用すると考えられるIGF-IおよびIGF-IIの発現はタンパク質栄養不足により抑制されるが、パラクライン的に機能していると思われる成長軟骨中のIGF-IおよびIGF-IIの発現はタンパク質栄養不足の影響を受けないことが示唆された。しかしながらこの差の原因は転写産物各サブタイプの発現量からは明らかにならなかった。
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