2細胞期胚で発現している遺伝子について、RT-PCRを用いて検定したが、培養環境の違いによって発現している遺伝子が大きく異なることが明らかとなった。既知の遺伝子としては現在7種類が同定されているが、そのうち2種類はミトコンドリアがコードするATPase6とND2という遺伝子であり、両者ともATP生産に大きく関与している遺伝子である。卵管環境下における体外培養胚では全体的に転写活性は高く、非卵管環境下では低い傾向にあったが、ひらんかんかんきょうかでとくいてき。また、合成酵素の構成成分であり、ゲノム遺伝子によってコードされているサブユニットについても検討した結果、ミトコンドリアDNAによってコードされる遺伝子同様に、卵管環境下で培養した胚において高い転写量が認められた。このことからも、この時期にATP生産に関わる遺伝子の転写が既に始まっていると考えられ、その活性が胚の培養環境によって大きく左右されることが明らかとなった。細胞周期関連タンパク質の発現量と局在を検討した結果、後期G2期におけるcyclinAの発現量に差が認められ、卵管との共培養区で発現量が多かった。Cdk2については卵管環境下で培養された2細胞期胚において活性化型と思われる位置にバンドが観察された。またCychnAおよびCdk2についてはその局在にも違いがあることが判明した。2細胞期のG2後期ではCychnAは共培養区では核および細胞質にほぼ均一に分布しているのに対し、非共培養区では核に分布していた。また、Cdk2は非共培養区では細胞質に分布しており、非共培養区ではCdk2はCyclinAとの複合体を形成してないと考えられる。G2後期におけるcychnAの作用については不明な点が多いが、Baldinら(1998)はCyclinAがCdc2と結合することでCdC25Bの分解を促し、M期への移行を誘発すると報告しており、M期への移行とCychnAの関連も示唆されている。このことから;初期胚においてもCyclinAが何らかの形でM期への移行に関与しているのではないかと考えられる。
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