研究概要 |
ブタ卵子の活性化におけるMAPキナーゼカスケードの役割を検討するためには,減数分裂進行時におけるMAPキナーゼカスケードの役割が明確であることが必要である.そこでまず,ブタ卵子の減数分裂進行時におけるMAPキナーゼカスケードの役割を追求する目的で,受容体結合型チロシンキナーゼの作用伝達物質であるPI 3-kinaseの阻害剤を添加した培地で,卵丘細胞付着卵子(COC),卵丘細胞除去卵子(DO)を培養した.COCでは減数分裂再開と第一減数分裂中期(MI)以降への進行が抑制されたが,DOは影響を受けなかった.このことから,卵丘細胞のPI 3-kinaseが成長因子の刺激を伝達し,卵子の減数分裂を促進すると推察された.次に,卵丘細胞のPI 3-kinaseの機能を解明するため,COCを培養後,卵丘細胞を回収し,MAP kinaseとギャップ結合構成因子Connexin-43(Cx-43)の変化を観察した.その結果PI 3-kinase系により活性化されたMAP kinaseがCx-43をリン酸化し,卵丘細胞間,卵丘細胞卵子間ギャップ結合が閉鎖され,卵子の減数分裂が進行するとことが明らかにされた.さらに,減数分裂時の卵子のMAP kinase活性を検討した結果,卵子のMAP kinaseは,MIで活性化し,第二減数分裂中期(MII)にも高い活性を維持していた.COCのこの活性は,PI 3-kinase阻害剤により有意に抑制された.COCとDOのM2卵子のMAP kinase活性を比較すると,DOが低かった.これらのことから,ブタ卵子の減数分裂時に,卵丘細胞のMAP kinaseは活性化され,その後,卵丘細胞のPI 3-kinaseにより卵子内MAP kinaseの高い活性か維持されることが明確にされた.そこで,MAP kinase活性の高いM2卵子をMEK inhibitorで処理するとブタ卵子は活性化され正常に発生することが明らかにされた.
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