研究概要 |
ブタ卵子の成熟培養時におけるMAP kinaseの役割とその活性化機構について検討した結果,第一減数分裂中期の卵子でMAP kinaseは急激に活性化し,その活性化されたMAP kinaseがMPFのさらなる活性化,正常な第二減数分裂中期への進行に必要であることが明確にされた.さらに,卵子内のMAP kinaseの活性化は卵丘細胞のPI 3-kinaseの活性に依存し,また卵子卵丘細胞間ギャップ結合の閉鎖により誘起されることを示した.次に,卵子活性化時に生じるCa2+上昇の指標となる透明帯反応について検討した結果,透明帯を構成する糖タンパク質の変化を,卵子一個の透明体で検出する手法を開発した.さらに,活性化卵子のMAP kinaseの変化について検討した結果,低濃度のCa2+イオノフォアによる卵子の活性化においては,MPFの活性は急激に低下するが,MAP kinaseは高い活性値を維持すること,その結果としてMPFが再活性化し,異常な減数分裂である第三減数分裂中期へ移行すること,高濃度のCa2+イオノフォアや低濃度のCa2+イオノフォアとMAP kinase kinase活性抑制剤U0126との複合処理では,MPFとMAP kinaseの急激な活性低下が誘起され,その後も低い値を維持すること,その結果として卵子は前核を形成することを示した.これらのことから,ブタ卵子はMAP kinase活性の低下に伴うMPFの低い活性の維持が重要であり,その結果として卵子の減数分裂は完了し,前核が形成されることが明らかとなった. 以上の結果から,ブタ卵子においてMAP kinaseの活性は卵丘細胞に制御され,その活性が第二減数分裂中期への進行に必要であること,およびブタ卵子内におけるCa2+の上昇によりMAP kinaseが不活性化されることが減数分裂の完了と前核の形成に必要であることが明らかにされた.
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