13日齢鶏胚から大腿筋を摘出し、酵素消化法により、筋芽細胞を調製した。24時間予備培養後、T4およびT3を培地に添加し6日間培養した。先ず、初代培養筋肉細胞の成長ならびにタンパク質代謝に対する甲状腺ホルモン-サイロキシン(T4)およびトリヨードサイロニン(T3)-の影響を調べた。その結果、T4とT3はともに筋管形成を促進したがT3は細胞増殖を抑制し、また、タンパク質分解をT3は促進するがT4は促進しないことが分かった。さらに興味深いことに、T3によりDNA含量が低下することが分かった。そこで、アガロース電気泳動および超遠心分離法によりDNAの断片化を観察し、アポトーシスに対する影響を調べた。予想通り、T3によってDNAの断片化が促進されたがT4の影響は認められなかった。さらに、タンパク分解酵素であるポロテアソームおよびカテプシンD活性はT3で促進されT4の影響を受けないことを示した。一般には、T3が活性型のホルモンでありT4はプロホルモンであると言われているが、本研究はT4も活性であることを示し、さらにT3とT4に役割分担があることを示したものである。また、T3がプロテアーゼ活性を増加させ筋肉細胞のアポトーシスを誘起することも重要な発見である。
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