実験1. 高温処理の影響に関する免疫組織学的解析 高温処理個体の肝臓の組織切片を作成し、脂肪染色したところ、高温処理により雄では肝細胞の核周囲には小型の脂肪滴が出現し、一方、雌の肝臓では産卵低下・停止に伴い大型の脂肪滴が消失し、新たに核周囲に小型の脂肪滴が出現した。また、高温処理後の肝臓抽出物をウエスタンブロット解析し、HSP70タンパク質の増加を確認した。 実験2. 熱ショックタンパク質(HSP70)遺伝子のPCR-RFLP解析 ゲノムDNAを鋳型としてHSP70遺伝子のタンパク質結合ドメイン領域をPCR増幅し、塩基配列を解析した。増幅産物は何れも615bpであり、互いに90%以上の相同性を示したが、塩基配列中に制限酵素CfoIおよびHindIII認識サイトの有無により識別しうる4型の変異が認められた。そこで8系統、60個体のゲノムDNAについてPCR-RFLP解析し、さらにこのPCR増幅産物をプローブにしてゲノムDNAをサザン解析した。その結果、これらの変異は単一遺伝子座における対立遺伝子に基づくことが示唆された。この遺伝子座をCJHSP70Aと命名し、また4つの対立遺伝子をそれぞれpQAR22、pQBR24、pQYR26およびpQGF29と呼称した。 実験3. 熱ショックタンパク質(HSP70)遺伝子のcDNA解析 先の実験2のPCR増幅産物をプローブとして、肝臓のcDNAライブラリーより開始コドンおよびポリAシグナルを有するHSP70の陽性クローンを7つ得た。そこでその1つ、pQLZ131クローンを選択し、全塩基配列を解析した。そのクローンとCJHSP70との塩基配列の相同性は80%であったが、各種動物のHSP70との相同性が高いことから、得られたcDNAクローンはCJHSP70とは別のHSP70遺伝子座に由来することが明らかにされた。そこでこの遺伝子座をCJHSP70Bと命名した。
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