経緯と目標:これまでの結果から、受精卵が発育する時にはコラーゲンが不可欠である。コラーゲンは2〜4細胞期と桑実期から胚盤胞期での2時期に特異的に働いていることが示唆された。形態維持に加え、細胞増殖に寄与していると推測された。コラーゲンは細胞群の形態保持には細胞骨格物質(アクチン)との結合が大切であるので、今回、1)受精卵の発育に伴うアクチンの分布を調べた。次に、2)細胞増殖因子はコラーゲンと結合して、細胞増殖を刺激する。体外培養液に増殖因子を加えた時に体外培養下での初期胚の発育率と細胞数を調べた。増殖因子のコラーゲンへの効果については今後のテーマとして残った。結果:1)体内および体外において発育したラット初期胚のアクチン蛍光染色を行った結果、両胚ともに細胞膜皮層、割球接合部、核周囲で強い蛍光が観察された。アクチンは細胞質内に存在し、その一端を架橋蛋白を介して細胞膜に付着し、割球の接合部で良く確認できた。胚全体における細胞質内のアクチンの蛍光強度は、体外で発育した胚より体内で発育した胚の方が強かった。体外で発育した胚の細胞数が体内で発育した胚に比べて少ないため蛍光が弱いと考えられる。次に、2)ラット2細胞期胚の体外培養では、桑実期までの胚の発育率をみると、ウシ胎児血清(CS)を培養液に加えた時には対照の非添加に比べて有意に高くなった。しかし、インシュリン添加では発育率が低下した。胚盤胞期胚への発育率においても同じ傾向が強く現れた。胚盤胞期胚にまで発育した胚の細胞数はインシュリン添加区で有意に多くなった。今後の課題として、他の増殖因子の発育率と細胞数への効果および細胞外マトリックスと細胞骨格への影響が興味点である。
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