研究(1)受精卵の発育につれて初期胚の細胞数は増加し、胚の形態を作る。この時期にコラーゲンの必要性を調べるために、コラーゲン合成阻害剤(cis-4-hydroxy-2-proline;CHP)の添加による胚発育率と胚盤胞期胚の細胞数への影響を調べた。体外培養下の2細胞期胚にCHPを加えると、4細胞期以降への発育は中止した。CHPと同時にプロリンを加えると、CHPの胚発育阻害作用は起こらなかった。コラーゲンの構成アミノ酸であるグリシンあるいはリジンをCHPと同時添加した時にはCHPの発育阻害作用は防げなかった。これらの結果はコラーゲンの合成を人為的に乱すと、受精卵の初期発育が阻害されることを示す。 研究(2)受精卵から胚盤胞期胚までの各発育過程からCHP添加し、体外発育培養を行ったところ、2細胞期から4細胞期と桑実期から胚盤胞期への発育過程で顕著に胚発育率が低下した。胚盤胞期胚に発育した胚においての細胞数は少なかった。コラーゲンは初期胚の発育に時期により重要性が異なることを示す。 研究(3)受精卵の胚発育に伴うコラーゲン遺伝子の発現を逆転写ポリメラーゼチェンリアクション法で調べた。コラーゲン1と3の遺伝子は4細胞期胚で弱いながら発現し、コラーゲン3遺伝子は胚盤胞期胚でも弱く発現した。コラーゲン4遺伝子は8細胞期胚以降に発現して、胚盤胞期胚では強く発現していた。 研究(4)初期胚の各発育期でのコラーゲン存在をコラーゲン1〜5タイプの混合抗体を用いて免疫組織化学法で調べた。2、4、および8細胞期では弱く免疫反応を、桑実期と胚盤胞期になると強く免疫反応を示した。これらの結果は初期胚の2〜4細胞期にコラーゲンの合成が行われていることおよび初期胚の発育にコラーゲンが必要であり、特に2から4細胞期と桑実期から胚盤胞期への発育に必要であることを示す。
|