研究概要 |
馬の精果においてインヒビンの個体発生を形態学的,組織化学的,免疫組織化学的,超微形態学的および分子生物学的方法を用いて解析した.馬の胎子精巣の特徴は間質がその大部分を占めることであるが、それは出生後次第に減少する.精子発生は2歳の春から始まり9歳までは次第に活性化を増した.発達過程での最大の特徴は色素細胞の出現であった.これは生後3日目で出現し、容積的には1歳まで増加したが,数的には2ヶ月齢で最高であった.その後,減少し3歳では消失した.この細胞は形態学的,組織化学的および超微形態学的特徴から,胎子型ライディヒ細胞がマクロファージに貪食されたものが消化されつつあるものでセロイド色素と判断された. インヒビンは多くの実験動物やヒトではセルトリ細胞に局在するとされていたが、我々の免疫組織化学的研究ではセルトリ細胞とライディヒ細胞に存在し、それは後者で強く染色されることが明らかになった.そこでインヒビンのα,βAおよびβBの三つのサブユニットに対する抗体を用いて免疫組織化学的に検索した結果,これら三つのインヒビンサブユニットはセルトリ細胞のみならずライディヒ細胞にも存在することが明らかになり,そらの染色強度はライディヒ細胞で強かった.次にこれら三つのサブユニットのmRNAの発現をin-situハイブリダイゼイションで検索した結果,これらのサブユニットのmRNAもセルトリ細胞とライディヒ細胞の両者に発現していることが確認され、これらのインヒビンサブユニットがこれらの細胞で合成されていることが明らかとなった.また,これらのサブユニットはセルトリ細胞よりもライディヒ細胞で強く発現していたことから,馬精巣でのインヒビンの産生源はライディヒ細胞であることが推察された.これらが自己分泌および/または傍分泌で周囲の細胞や自分自身に影響を与えていることは推察できるがその詳細は今後の課題である.
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