研究概要 |
[目的]牛に社会的序列の変化というストレスを与え、AVP投与後のACTHとCortisolの分泌反応を調べることにより、ストレス評価方法としての有効性の検討を行なった。 〔実験方法〕ホルスタイン種育成雌牛実験区5頭、対照区3頭を供試した。Day(D)0に、実験区5頭を乾乳牛群(5頭)へ混群し、混群3日前(P期)、混群後3日(D3)、7日(D7)、14日(D14)、21日(D21)に頸静脈へ生理食塩水1cc溶解AVP0.093mg/頭を投与し、0(投与直前)・投与後10・30・60・120分に、頸静脈より採血、RIA法により血漿中ACTHとCortisol濃度を測定した。各採血日前3日間8時〜17時に闘争行動を観察・記録、その勝敗より各個体の優劣順位(ADV)を評価した。 〔結果〕実験区ではP期の,ADVは74.1〜14.5で、混群後D3に31.4〜0.4に低下した。AVP投与後の血漿中ACTH濃度は、10分にピークとなりその後低下し、5頭平均で0分では8.33(P期)〜10.26(D21)pg/ml、10分13.53(D3)〜21.31(P期)pg/ml、60分6.91(P期)〜9.60(D14)pg/mlで、0〜60分では日による差はなかったが、120分ではP期5.28pg/mlから、D21には7.63pg/mlに増加した(p<0.01)。AVP投与後の血漿中Cortisol濃度は、10分〜30分にピークとなりその後低下した。0分では1.26(P期)〜2.90(D3)μg/dl、10分に最も高く7.04(P期)〜4.08(D7)μg/dl、120分では0.43(D21)〜0.97(P期)μg/dlだった。AVP投与後のCortisol増加反応は、実験区では30分を除く各時間で混群後有意に低下した(p<0.05)。対照区では実験区と同様にACTHでは10分、Cortisolでは10分から30分にかけてピークとなり、その後低下した。日による差は見られなかった。実験区ではADVはD3にACTH濃度とAVP投与後30・60・120分で0.87以上の正の相関を示し(p≦0.05)、優劣順位の高い個体ほどACTH濃度が高かった。CortisolはADVとは有意な相関は示さなかった。また、順位低下量が大きい個体ほどACTH濃度が高く、Cortisol濃度が低いことが示された。 これらの結果からAVP投与後のACTHとCortisol分泌反応の変化は社会的ストレスと関連し、ストレス評価方法として有効である可能性が示されたが、まだ頭数が少なく、ストレスの種類や強度、持続期間などにより、その反応がどのように変化するのかについては更に検討を重ねていく必要があると考えられる。
|