研究課題/領域番号 |
10660287
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
新城 敏晴 宮崎大学, 農学部, 教授 (10040859)
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研究分担者 |
後藤 義孝 宮崎大学, 農学部, 助教授 (30142136)
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キーワード | 壊死桿菌 / Fusobacterium necrophorum / 嫌気性細菌 / 病原因子 / 肝膿瘍 / LPS / 好中球 / 走化因子 |
研究概要 |
壊死桿菌Fusobacterium(F.)necrophorumは多くの動物の消化管内に生息する嫌気性細菌で、特に牛ではこの菌が血中に侵入して肝臓に膿瘍を形成したり、蹄部に侵入して趾間腐爛を起こす。これらの疾病は内因性嫌気性菌感染症として世界中にひろく存在し、畜産業に大きな損害を与えている。我々はマウスを用いた感染実験系とくに膿瘍形成モデルを確立するとともに、同菌がもつ病原因子について研究をおこなった。F.necrophorumが分泌するヘモリジンはホスホリパーゼA_2様活性をもち、動物細胞膜の構成成分であるホスファチジルコリンに作用し、溶血性や細胞傷害をひきおこす。同菌はnecrophorum(Fnn)とfunduliforme(Fnf)の2亜種に分類されるが、前者のほうが宿主に膿瘍をよく形成し細胞傷害性も高い。今年度は両菌からLPSを分離し、分子量、化学組成をはじめ細胞傷害性やマウス致死性などを比較した。その結果Fnn由来のLPSはFnf由来のそれに比べてC3H/Heマウスに対する致死活性が強く、また新鮮マウス血清に対して著明な白血球走化性を誘導することが分かった。LPS自身が走化因子として作用することはほとんどなく、血清中に誘導された走化因子は易熱性であった。両菌種から分離されたLPSはどちらもin vivoにおいて血中の好中球とマクロファージ数を急激に増加させたが、その程度はやはりFnn由来のLPSのほうが強く、病原性の強い菌由来のLPSが病巣形成の一翼を担っている可能性が強く示唆された。感染初期に菌から放出される病原因子のみならず同時期に宿主内に誘導されてくる炎症性物質やケモカインもまた病巣形成に関与していると思われるため、現在宿主側要因についても検討中である。
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