肝癌自然発症LECラットを用いた発癌に対する酸化ストレスの影響の研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10660289
• 研究機関: 酪農学園大学
• 研究代表者: 林 正信 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (10130337)
• 研究分担者: 荒井 惣一郎 酪農学園大学, 獣医学部, 助教授 (40151138)
• キーワード: 発癌 / 酸化ストレス / DNA損傷 / 細胞周期 / LECラット / 放射線感受性

研究概要

本研究はLECラットの高い発癌率に対する酸化ストレス関与を明らかににすると共に酸化ストレスによって生じたDNA損傷や細胞周期調節の異常遺伝子の解析を通じて肝癌発生との関連性を明らかにすることを目的として今年度は以下のような結果を得た。
1) LECラット細胞における細胞周期調節遺伝子の検討:酸化ストレスとは異なった種類のDNA損傷を引き起こす短波長紫外線の照射によってLECラットの細胞に高頻度でアポトーシスが誘発され、この際対照のWKAHラット細胞で見られるp53タンパク質の増加が認められず、LECの細胞がp53に依存しない経路におけるアポトーシス誘発に高感受性であることを示した。また、DNAトポイソメラーゼ阻害剤に対するLEC細胞の高い感受性を示し、この点でもATの細胞との類似性を示した。
2) 肝臓における酸化ストレスとDNA損傷の解析:コメット法を用いてLECラット肝臓における個々の肝細胞のDNAの切断頻度について現在解析をしており、肝炎が発生するよりもかなり早い時期からDNA切断が起こっていることを検出し、銅濃度との関連について解析中である。
3) 肝癌発生に関わる疾患モデル動物の作製と当該遺伝子のマッピング:LECラットを他の系統のラットへと交配した後、バッタクロスを繰り返して現在3代目ととなっている。また、当該遺伝子のマッピングについても現在検討中である。
4) DNA切断修復遺伝子などの解析:DNA損傷後の早い時期での潜在性致死損傷の回復にLECラットは異常があることを見い出し、これと関連するDNA切断の修復に重要な役割を果たしているDNA依存タンパク質キナーゼの細胞内局在に異常があるとの結果を得、現在解析を継続中である。

研究成果

• [文献書誌] M.Hayashi: "Higher sensitivity in induction of apoptosis in fibroblast cell lines derived from LEC strain rats to UV-irradiation." J.Vet.Med.Sci.60・2. 207-212 (1998)
• [文献書誌] D.Endoh: "Retroviral seguence located in border region of short uniqne region and short terminal repent of M4.5 strain of Hurek's disease rirastylel." J.Vet.Med.Sci.60・2. 227-235 (1998)
• [文献書誌] M.Hayashi: "Higher sesitivity in LEC rat cells to topoisomeruseII inhibitor,ellipticine." J.Vet.Med.Sci.60・8. 969-971 (1998)
• [文献書誌] 林 正信: "放射線感受性モデル動物としてのLECラットについて" 放射線生物研究. 33・2. 123-136 (1998)
• [文献書誌] M.Hayashi: "Intramuscular injection of plasmid DNA expressing mRNA coding the nucleocapsid protein of JHMV partially proteoted mice against acuteinifection with JHMV." Adv.Exp.Med.Biol.440. 693-695 (1998)
• [文献書誌] M.Hayashi: "Inhibitory effects of nodifiod oliyonacleotides complementary to the leuder RNA on the multiplication of mouse hepatitis virus." Adv.Exp.Med.Biol.440. 701-705 (1998)