研究概要 |
今年度の検討点及び結果の概要は以下に示した通りである。 (1) 5-HT7受容体を介するブタ子宮筋収縮抑制作用のメカニズム:ブタ子宮平滑筋上の5-HT7受容体が興奮するとadenylate cyclaseが活性化され、cyclic AMPの産生が増加し、細胞内Ca^<2+>濃度が低下するとともに平滑筋収縮装置のCa^<2+>感受性が減少し子宮筋の収縮性が低下することを明らかにした。一方、NO-guanylate cyclase-cyclic GMP系は、5-HTによる抑制作用には関与していなかった。K^+-channel遮断薬を用いた検討では、cyclicAMP依存性収縮抑制作用の一部にK^+-channelの活性化が関係している可能性も示唆されたが、channel typeの同定には至らなかった。以上述べた、5-HTによる抑制作用のメカニズムについては、内容をBrit.J.Pharmacology(123,173-182,1998)及びJ.Autonomic Pharmacology(1999,in press)に掲載済である。 (2) ブタ子宮に5-HT7受容体が在在することの分子生物学的手法による証明:ブタ子宮平滑筋組織よりRNAを抽出し、逆転写酵素でcDNAに変換させた。ヒト、モルモット5-HT7受容体の塩基配列中で相同性の高い領域を基にprimerを作成し、得られたcDNAとの間でpolymerase chain reaction(PCR)を行い、5-HT7受容体をcodeする遺伝子が存在することを確認した。増幅領域のシークエンスを基にブタ5-HT7受容体全塩基配列のcloningを試み、現在、約1350bpのcode領域の内、1028bpまで明らかにしている。明らかにしたcode領域は、モルモットと比較して89.7%、ヒトと比較して91.1%、ラットと比較して89.1%の相同性があった。子宮の縦走筋及び輪走筋における5-HT7受容体code遺伝子の量を定量的PCRにより検討したところ、輪走筋(7)>縦走筋(3)となった。この5-HT7受容体量の差が5-HTによる子宮筋収縮抑制作用の筋層差(輪走筋>縦走筋)に反映されていると推察している。
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