研究概要 |
今年度の検討点及び結果の概要は以下に示した通りである。 (1)5-HT7受容体とβ2-adrenaline受容体を介する抑制作用の比較:5-HT7受容体を介する子宮収縮抑制作用の特徴を明らかにするために、子宮運動を低下させるもうひとつの経路、β2-adrenaline受容体と5-HT7受容体のブタ子宮における分布及び抑制作用を比較検討した。その結果、5-HT7受容体が輪走筋に局在するのとは対照的にβ2-adrenaline受容体は縦走筋に局在していること、受容体の分布密度に一致し5-HT7受容体を介する抑制は輪走筋で、β2-adrenaline受容体を介する抑制は縦走筋で著明に発現することが明らかになった。即ち、ブタ子宮ではβ2-adrenaline受容体が縦走筋収縮を、5-HT7受容体が輪走筋収縮を抑制するように役割分担しているものと推察された。この役割分担は、ブタ子宮の他の部位(体部、頚管部)においても同様に認められた。本検討の結果は、5-Hydroxytryptamine7 and β2-adrenaline receptors share in the inhibition of porcine uterine contractility in a smooth muscle layer-dependent manner.Eur.J.Pharmacol., submittedにまとめた。 (2)5-HTによる抑制作用のin vitro hormone処置による変化に関する基礎検討:ブタ子宮平滑筋標本を17βestradiol(10-100nM)を含んだ栄養液中で24時間処置(4℃)し5-HTによる自発収縮抑制作用が変化するか否かを検討した。17βestradiolの処置は、自発収縮の頻度及び5-HT誘発性収縮には著明な影響を与えなかった。今後、hormone処置法の検討(器官培養)及び処置hormoneの検討(progesterone, progesterone+17βestradiol)を行い5-HT7受容体の発現がどのように調節されているか明らかにしたい。 (3)5-HT以外の子宮収縮抑制経路存在の有無:子宮筋収縮に対する種々の生理活性peptides(VIP, PACAP, enkephalins, adrenomedullin, neurokinin A, substance P)、 NO donor、NO合成酵素阻害薬の作用を検討した。しかしながら、peptides,NOが子宮筋収縮を抑制するという積極的な成績は得られなかった。
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