上皮小体ホルモン関連タンパク(PTHrP)は悪性腫瘍随伴性高カルシウム血症の主要な原因物質として1987年に発見され、上皮小体ホルモンに類似した機能と構造を持つ。PTHrPは泌乳中の乳腺組織をはじめ様々な正常組織で産生されているが、その役割は不明な点が多い。分娩1週間前後の乳牛の乳房からコラゲナーゼ消化法により腺房を分離し、液体窒素中に保存しておいた腺房細胞を24穴プラスチックシャーレを用いてコラーゲンゲル培養およびコラーゲン被覆培養を行なった。コンフルエント直前にモネンシン、コルヒチンおよびサイトカラシンBを種々の濃度で培地に添加し、添加24時間後および48時間後のPTHrP産生と細胞内小胞輸送、微小管およびアクチンフィラメントの重合に及ぼす影響について検索した。PTHrPの産生はモネンシンおよびサイトカラシンB添加により濃度依存性に減少したが、逆にコルヒチン添加では軽度増加した。乳腺上皮細胞におけるPTHrP分泌はアクチンフィラメントの形成と関係するが、微小管の形成とは関連しないこと、さらに培養乳腺上皮細胞のPTHrP分泌様式は調節性分泌ではなく構成性分泌であることが示唆された。また、形態学的にモネンジン添加により乳腺上皮細胞は膨化したことから、細胞内小胞輸送が阻害されたことによりPTHrPの産生が抑制されたことが示唆された。しかし、サイトカラシンB添加によるPTHrP分泌量の低下の原因がアクチンフィラメントの脱重合によるものなのか、あるいはPTHrP mRNA発現の低下によるものなのかについては解明できなかった。
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