研究概要 |
既に明らかにしたStaphylococcus hyicus表皮剥脱毒素B(shETB)遺伝子を含む1.7kbHindIII断片の塩基配列を基に上流側にBam HI、下流側にEco RI認識配列を付加したプライマーを作製し、PCR法によりshETB遺伝子(heb)のOpen reading frameを増幅した。この増幅断片をBam HIおよびEco RIで消化後、同酵素で消化したpET-32aのT7プロモーター下流のクローニングサイトに挿入し、T7RNAポリメラーゼを産生するEscherichia coli BL21(DE3)株に形質転換した。得られた形質転換株をIPTG存在下で培養し、この菌体を超音波により破砕後、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気永動(SDS-PAGE)に供したところ、推定分子量(47kDa)と一致したヒスチジン融合蛋白の発現が認められた。そこで、菌体破砕物をヒスチジンとの結合能を有するニッケルキレートカラムでアフィニティー精製した。この精製したヒスチジン融合蛋白をSDS-PAGEで解析したところ、上記の47kDa蛋白のみが認められた。この精製蛋白をshETBの感受性動物である1日齢ニワトリひなに皮下接種したところ、接種1時間後には表皮剥脱現象が認められたため、本蛋白を組換え型shETB(r-shETB)とした。S.hyicus P-43株から精製したshETBおよびr-shETBを用いて耐熱性試験を実施したところ、何れも60℃,30分間の加熱で失活した。また、shETBに対するモノクローナル抗体を用いてwestern blot解析を行ったところ、shETBは27kDa、r-shETBは47kDaの位置に1本の発色バンドを認めた。以上の成績より、r-shETBはポリヒスチジンタグ、チオレドキシンタグ等の付加配列により20kDa程分子量が大きくなっているものの、shETBと同一の毒素活性ならびに抗原性を有していることが明らかとなった。S.hyicusからは1.5lの培養液から0.3mgの精製shETBしか回収できないが、heb組換えpET-32aを有するE.coli BL21株では100mlの培養液から1.6mgのr-shETBが精製できるため、毒素の大量回収が可能となり、毒素の構造-括性連関の解析に有用であると思われる。
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