研究概要 |
核酸接種法,いわゆるDNAワクチンは従来のワクチンに変わる免疫法の新技術として注目を集め,精力的にその基礎研究および技術開発が進められている.本研究は,この新技術を実験動物のレベルから対象動物のレベルへ移行することが可能か否かを見極めることを目的とし,具体的には犬のウイルス感染症を対象としたDNAワクチンの効果の究明を目指している. 本年度は,対象動物を用いる試験へ移行するための基礎データを得ることを目的とし.実験動物レベルでプロモーターの違いによるワクチン効果の差および各種病原ウイルスの感染防御抗原の効果の2点について試験を進めた. DNAワクチンには強力なプロモーターの使用が有効と考えられるのでこのようなプロモーターを有すると考えられる真核細胞発現プラスミド,pCDM8,pCl,pCAGGS,改変pEF321-CATのクローニング部位に狂犬病ウイルスGタンパク質遺伝子を挿入し,マウス筋肉内へ接種した.これらの中でpClおよびpCAGGSを用いたプラスミドでは中和抗体の上昇を確認できたが,他の2者では中和抗体の産生をほとんど認めなかった.さらに上述のプラスミドpCAGGSにイヌジステンパーウイルスワクチン株よりクローニングしたHあるいはFタンパク質遺伝子を挿入しマウスに接種したところ,H遺伝子を挿入したプラスミドでは低いながら中和抗体が産生されたが,F遺伝子のそれでは中和抗体の産生が確認できなかった. 以上の結果より,強力なプロモーターのプロトタイプの一つとして知られているサイトメガロウイルスのプロモーター(pCDM8)を更に改変したプロモーター(pClあるいはpCAGGS)がDNAワクチンの開発には有益と考えられた.また,イヌジステンパーウイルスに対するDNAワクチンの開発にはさらなる工夫が必要であろうと考えられた.
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