研究概要 |
核酸接種法,いわゆるDNAワクチンは従来のワクチンに変わる免疫法の新技術として注目を集め,精力的にその基礎研究および技術開発が進められている.本研究は,この新技術を実験動物のレベルから対象動物のレベルヘ移行することが可能か否かを見極めることを目的とし,具体的には犬のウイルス感染症を対象としたDNAワクチンの効果の究明を目指して実施した. 本年度は,昨年度のマウスを用いた試験によりその有用性が明らかとなったプロモーターを用い,実際に犬でのDNAワクチンに対する反応性を試験した.昨年度の研究成果より有用と考えられた発現ベクターpCI,およびpCAGGSのうち,後者に狂犬病ウイルスGタンパク質をコードする遺伝子を組み込み,試験に供した.このプラスミドを犬の大腿四頭筋内に100μg接種した場合,8割以上の犬で狂犬病ウイルスに対する中和抗体が誘導された.誘導された中和抗体価は,高いものでは市販の不活化ワクチンにより誘導される中和抗体価と同等のレベルまで達した.また,同じく10μgを接種した犬では,ほぼ5割の犬で中和抗体の上昇が認められた.犬において10μg接種によりDNAワクチンに対する反応が認められたのはこの報告が始めてと考えられ,使用したプロモーターの有用性を示す成績と考えられる.犬個体に対してDNAを2回投与した場合,第2回目の投与に対する抗体応答が素早く,かつ,高いレベルを維持したことから,第1回目の投与により,犬の体内で抗体産生に対する免疫記憶が成立していると考えられた.
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