研究概要 |
前年度の研究により得られたEHV-9の病原性変異体の解析を行った.この変異体はEHV-9をウサギ腎臓細胞RK-13で継代し,継代にともないウシ腎臓細胞においてプラーク形成させた際に,大きさが小さいプラークの割合が増加し,23代目ではほとんどが小プラークとなったウイルスである.こMDBK細胞において,野生株は大プラークを,23代継代したウイルス(R23株)は小プラークを形成した.野生株とR23株のハムスター感染実験では,感染から斃死までの日数及びLD50値に有意差が認められた.病理組織像の観察では,脳における病変分布,病変部の神経細胞の生存と壊死の割合およびミクログリアの反応が異なっていた.R23株から小プラーク形成クローン化ウイルスは,野生株と同様の強毒型クローンおよび発症後昏睡状態に陥ることなく,体重が増加し,軽度の神経症状のみを残して回復する弱毒型クローンが得られた.弱毒型クローンは脳内におけるウイルス増殖が抑制されていた.他のヘルペスウイルスで小プラーク形成に関与しているとされているgI-gE領域を検索したが,各クローン化ウイルスの制限酵素切断像に相異は認められなかった.また,gG組み換えウイルスの作製を試みたが,得られなかった.以上の結果から,ウサギ腎臓細胞由来RK13細胞で連続継代することにより,プラーク形成能およびハムスターに対する病原性が変化した変異ウイルスを,さらにプラーククローニングを行うことにより,強毒型クローンおよび弱毒型クローンを得ることができた.プラーク形成能,ハムスターに対する病原性およびハムスター脳内ウイルス増殖能が互いに関連している可能性が示唆された.
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