研究概要 |
本研究の基礎となるEHV-9の動物に対する病原性解析としてウマへの感染実験を実施した.その結果,接種馬は発熱,ウイルス血症および鼻汁へのウイルス排出がみられたが,神経症状は観察されなかった.しかしながら,病理組織学的に非化膿性脳炎がみられ,EHV-9がウマに対して病原性を有していることが明らかになった.ついで,実験感染モデルを確率するため,シリアンハムスターに接種したところ,強い神経症状を示し,斃死した.病理組織像はトムソンガゼルの自然発生例に類似していた.したがって,ハムスター実験感染モデルがEHV-9の神経病原性を解析するためのモデルとして有用であることが明らかとなった.そこで,EHV-9を異種動物由来培養細胞で長期連続継代して変異株を作製し,この変異株の病原性を調べた.はじめに,EHV-9をうさぎ腎臓細胞RK-13で継代し,一定期間ごとに性状の変化を調べた.その結果,継代にともないウシ腎臓細胞においてプラーク形成させた際に,大きさが小さいプラークの割合が増加し,23代目ではほとんどが小プラークとなった.このMDBK小プラーク形成ウイルスはRK-13では野生株と同様のプラークを形成した.ハムスターにおける病原性を調べたところ,致死率および死亡までの期間に変化が見られ,弱毒化していた.以上の結果から,ウサギ腎臓細胞由来RK13細胞で連続継代することにより,プラーク形成能およびハムスターに対する病原性が変化した変異ウイルスを,さらにプラーククローニングを行うことにより,強毒型クローンおよび弱毒型クローンを得ることができた.プラーク形成能,ハムスターに対する病原性およびハムスター脳内ウイルス増殖能が互いに関連している可能性が示唆された. 本研究により,ウマヘルペスウイルス9型の病原性解明の基礎を得ることができた.しかしながら,病原性に関与するウイルス遺伝子に関しては同定するにいたらなかった.今後は,さらに動物レベルでの解析と分子レベルでの解析を有機的に融合させ,病原性発現に関与するウイルス遺伝子とその機能を明らかにする必要がある.
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