研究概要 |
1.ラット背部切開創に及ぼすキチン・キトサンの分子量および脱アセチル化度の影響:キチン・キトサンともその分子量および脱アセチル化度に関係なく術後4日目の引っ張り強度は対照群に比べて有意に上昇した。組織学的観察の結果、高濃度のキチン・キトサンにおいては炎症反応が強い傾向がみられた。プロリンヒドロキシラーゼ(P-H)活性はキチン・キトサンとも高濃度で高い活性を示す傾向があり、特にキトサンで著明であった。 2.キチン・キトサンおよびこれらのオリゴマー・モノマーが線維芽細胞および血管内皮細胞に及ぼす影響:1)直接作用:遊走能については線維芽細胞に対しては、キチン、キトサンおよびキトサンモノマーにおいて抑制的に働いた。いっぽう、血管内皮細胞に対しては、キチン、キトサンおよキチンモノマーにおいてその遊走を促進した。またキトサンオリゴマーおよびキトサンモノマーにおいてその遊走を抑制した。増殖能についてはどのサンプルも両細胞に影響を及ぼさなかった。2)間接作用:線維芽細胞とキチンについては、被検上清により遊走が抑制された。線維芽細胞とキトサンについては被検上清だけでなく、キトサンと培養液をインキュベートした対照群においても抑制がみられた。血管内皮細胞とキチンについては、被検上清は影響を示さなかった。血管内皮細胞とキトサンについては、被検上清により遊走が抑制された。 3.キチン・キトサンの(P-H)活性に及ぼす影響:ラットを用いて、背部皮膚にキチン、キトサン懸濁液および生理食塩水を含浸させたポリエステル不織布(1x1cm^2)を埋設し、2,4,7,11,14日目に動物を安楽死後、埋設材を回収した。埋設材に侵入した肉芽組織中のプロリンヒドロキシラーゼ(P-H)活性を測定することにより、コラーゲン合成を評価した。埋設後、4日目までは全ての群において活性は低かった。その後10mgキチン群を除いて、直線的な増加を示した。10mgキチン群では7日目に急激に増加し、その後プラトーとなった。これらの結果は組織学的所見と一致した。
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