本研究はわが国の紅斑熱郡リケッチアの実態を明らかとし、現在患者の報告されていない地域における予防対策の立案に資することを目的として行われた。調査対象とした非流行地は北海道石狩中部、沖縄県、及び大阪府北部を主として調査対象とした。最近、人への病原性が有ると考えられるように成ったR.helveticaに類似するリケッチアがヤマトマダニから本州では分離されている。しかし、北海道ではヤマトマダニから検出されず、このリケッチアが分離されたlxodes ricinusマダニと極めて近縁なシュルツェマダニから検出される。北海道のヤマトマダニから検出されるリケッチアは異なるリケッチアである。感染環に関与する齧菌類を含めて病原体地理学的、生態学的問題として興味が惹かれる。一方。沖縄では人とイヌに紅斑熱リケッチアに対する高い抗体保有が認められ、イヌから日本紅斑熱リケッチアと区別できないリケッチアが検出されたが保有ダニを付き止めるには至っていない。大阪ではシカから同様のリケッチアが検出された。東南アジアのダニ、齧菌類、イヌからは日本紅斑熱に類似するリケッチアは検出されていない。
|